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【SGT-EVORA】SUPER GT 2021 第8戦 IN FUJI SPEEDWAY, GT 300KM RACE レースレポート

2021/12/01



11月27日(土)から28日(日)の2日間にかけて、スーパーGT第8戦「FUJI GT 300KM RACE」が開催されました。最終戦の舞台となったのは、富士スピードウェイ。今年最後のレースで全てを出し切るべく、muta Racing INGINGはSGT LOTUS EVORAと共に、全力で戦いました。


■公式練習走行

土曜日の9:00から開催された公式練習走行は、まず阪口良平選手がmuta RACING LOTUS EVORA MC(以下SGT EVORA)のステアリングを握りました。最終戦は、これまでのサクセスウェイトが、全て下ろされる一戦。BoP(性能調整)によるウェイトハンディは未だに重くのしかかるものの、純粋なマシンポテンシャルで戦えるこのレースに、チームは戦力を尽くしました。

そして阪口選手は、走行開始間もない7周目早々に、1分35秒726のタイムを刻んでクラス2番手に躍り出ました。その後はライバルも次々とタイムを上げて行きましたが、ストレートスピードが問われる富士スピードウェイでこのタイムは、上々の滑り出しと言えました。ロングランのセッティングを担当した加藤寛規選手は、序盤に1分37秒前半のタイムを刻み、その後も38秒台前半でコンスタントに周回。さらにGT300の占有走行では36秒台を連発し、最終的に1分36秒259までそのタイムを縮めました。公式練習走行トップは1分35秒370をマークした♯61 SUBARU BRZ GT300(井口卓人/山内英輝 組)でした。またSGT EVORAの順位は、最終的に6番手となりました。




■公式予選1回目(Q1)


14:30から始まった公式予選は、阪口選手が予選Q1を担当。SGT EVORAはBグループに出走し、14台のライバルたちとQ1突破を掛けて戦いました。公式練習走行時よりもさらに低くなった気温に対し、阪口選手は入念にタイヤをウォームアップ。SGT EVORAは4周目に1分39秒330のタイムを刻んでまず7位へと浮上しましたが、本格的なアタックは翌周の5周目からとなりました。ライバルたちが1回目のアタックを終え、その順位が徐々に下がって行くSGT EVORA。しかしここで阪口選手は1分35秒818のタイムを刻み、その順位を6番手まで押し戻しました。しかしライバルたちが2回目のアタックに入ると、SGT EVORAの順位は再び下降。Q1突破のボーダーラインからも弾き出され、9番手までポジションを落としました。そして注目のラストアタックで、阪口選手は見事な走りを披露しました。

セクター1でベストを0.199秒更新したあと、セクター2では逆に0.013秒ダウン。しかし最終セクターでは0.325秒を取り返して、1分35秒307をマーク。一気に3位までそのポジションを巻き返して、Q1-B予選を突破したのでした。この走りに対して阪口選手は「エヴォーラはミッドシップなのでフロントがどうしても暖まりにくく、今回選んだタイヤに対しては、もう一周欲しいくらいでした。それでもチームが予選までにセットアップを仕上げてくれたおかげで、最後の周でタイムを出すことができました」とコメントしました。Q1-Bでトップにたったのは、1分34秒794をマークした♯88 ランボルギーニ ウラカンGT3(元嶋佑弥選手)でした。






■公式予選2回目(Q2)

公式予選Q2は、15:23からスタート。Q1を突破した上位16台が、熾烈なグリッドを争いを展開しました。阪口選手の走りを確認していた加藤選手は、1周目から積極的にタイヤをウォームアップ。5周目のアタックに向けて、コンディションを整えました。そして渾身のアタックを試みた加藤選手でしたが、ここで思わぬ事態が起こりました。ADVANコーナーでの走りが4輪脱輪とオフィシャルに判定され、この周のタイムが抹消されることになったのです。ピットから無線でこの知らせを聞いた加藤選手は、タイヤを温存するためにアタックを中断。結果的にこの周は1分35秒594をマークし、タイムボード上でも10番手となりましたが、加藤選手は翌周に最後のアタックに臨みました。

そして加藤選手は見事に1分35秒446のタイムを刻み、最終的に6番手のポジションを獲得したのでした。これに対し加藤選手は「ギリギリ大丈夫かと思ったのですが、脱輪の判定になってしまいました。最後のアタックは失敗が許されない状況だったので攻めきれなかったですが、結果的にこのポジションを取れて良かったです」とコメントしました。こうしてSGT EVORAは、決勝レースを三列目からスタートすることになりました。ポールポジションは、6周目に1分34秒395のタイムを叩き出して大逆転を遂げた、♯61 SUBARU BRZ GT300(山内英輝選手)が獲得しました。





■決勝レース

日曜日に開催された決勝レースは、定刻通り13:00からフォーメーションラップをスタート。GT300クラスは総勢27台のマシンが参加し、レースは300km・66周(GT500換算)で争われました。スタートドライバーは、加藤選手が担当しました。



6番グリッドからレースに臨んだSGT EVORAは、オープニングラップでも集団に巻き込まれることなくその順位をキープ。しかし3周目に入ったとき、SGT EVORAにはオフィシャルからドライブスルーペナルティの判定が下されました。それは、決勝前のウォームアップ走行中に起こった接触が原因でした。状況的にはタイヤを暖めていた♯56 日産GT-R GT3に、既にアタックに入っていた阪口選手が後ろから接触。56号車が弾かれる形でスピンを喫しまし、これがペナルティーの対象となりました。タイヤをウォームアップしていたGT-Rがターンインしきたのは不運としかいいようがありませんが、後ろにいた車両が減速する(この場合はブレーキングを詰めない)べきであるという裁定が下り、チームはこれを受け入れました。


この知らせを受けて加藤選手は早々にドライブスルーペナルティを消化。この結果SGT EVORAの順位は27番手まで落ちました。しかしその直後に最終コーナーでアクシデントが発生し、7周目にはセーフティカーが導入。これによって順位こそ最下位となりながらも、車両間隔は開かずに済みました。レースはまだまだ序盤だったこともあり、加藤選手はここから諦めずにプッシュを開始しました。燃料の搭載量が多い状況で、速さの違うGT3勢に前を塞がれるとSGT EVORAにとっては非常に苦しい展開になりましたが、それでも我慢の走りで徐々にポジションを上げ、21周目には18番手に。その後はコンスタントに38秒台が刻めるようになったため、35周までスティントを引っ張り、見かけ上の順位ではあるものの、4位で阪口選手にマシンを渡しました。





タイヤ交換と燃料補給を終えたSGT EVORAは、16番手でコースへ復帰。走り始めこそ集団の中で速さを封じられたものの、阪口選手はその後ずっと38秒台をキープし続けました。そしてその順位を少しずつ取り戻し、最終的に12位でチェッカーを受けました。レースは予選3番手から序盤にでトップに躍り出た♯60 TOYOTA GR Supura(吉本大樹/河野俊佑 組)が、今季2勝目を飾りました。そしてシリーズは、3位でチェッカーを受けた♯61 SUBARU BRZ GT300(井口卓人/山内英輝 組)が、悲願の初タイトルを獲得しました。こうしてmuta Racing INGINGとLOTUS EVORAの2021年シリーズは、幕を閉じました。最終的にドライバーズランキングは11位、チームランキングは13位となりました。





SGT-EVORAにとって苦しい戦いが続いた一年でしたが、ブリヂストンタイヤを初めて装着したシーズンながら、第3戦では優勝を飾ることができ、得るものが多いシーズンとなりました。そしてシーズン中はロータスファンの皆様の声が、チームの強い励みとなりました。一年間、#2 muta Racing Lotus MCを応援頂き、誠にありがとうございました!






■チーフエンジニア 渡邊信太郎


「決勝レースは、最初に出鼻をくじかれてしまったのが残念でしたね。阪口選手としても相手がウォームアップ中だと判断しての1コーナーだったので、不運な位置関係だったと思います。富士はピットが長いので、ドライブスルーペナルティは大きく影響します。およそ33秒の差がそのまま、レースの結果に結びついてしまいました。今年はブリヂストンタイヤに変わったことが、最も大きなトピックでした。あまりに大きくその内容が変わったので、エヴォーラに合うタイヤをゼロから探すことが、とても難しいシーズンでした。ただそのなかでも徐々に回答を見つけ出して行くことができたので、これを来シーズンの糧にしたいと思います。今年一年間、応援ありがとうございました!」


■ドライバー 加藤寛規


「今回はアクシデントこそありましたが、予選位置のままレースを続けていれば、同じくらいのポジションは取れたと思います。公式練習走行からの流れやタイヤの選択でも悪いところはなかったので、これが我々の、現状の実力だと思います。もちろん、BoPも含めてですが。シーズンを振り返ると、我々は最後までブリヂストンタイヤというものを学んでいて、それが結果となって出た一年だったと思います。とはいえきちんとパフォーマンスを出せたときは勝つことができましたし、ポイントも取れました。ですから個人的には、良いシーズンでした。チームやエルシーアイ、関わって下さった全ての方々、ロータスファンのみなさんには、感謝しかないです。そして自分を支えてくれている高橋(一穂)さんに、感謝と尊敬の気持ちを捧げたいと思います。一年間、ありがとうございました!」


■ドライバー 阪口良平

「ウォームアップ走行ではGT500マシンに付いて行く形で1コーナーへ入っていったつもりだったのですが、結果としては接触してしまいました。この裁定は受け入れています。レースはゴールまでマシンを運ぶことが仕事だと思っているので、切り替えて集中しました。マシンはチームがよく仕上げてくれたのですが、今回はブレーキ踏力が上げづらい状態で、そうなるとピックアップを取り切ることができず、少し苦戦しました。この一年は、とても実りの多いシーズンでした。初めてロータスに乗せてもらって、そのトラクション性能の高さに感心しましたし、逆にストレートが遅く、それを補って走ることは自分にとって勉強になりました。そしてプロフェッショナルなチームと共に戦えたことを感謝しています。一年間、ありがとうございました!」