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【SGT-EVORA】SUPER GT 2021 第3戦 IN SUZUKA CIRCUIT, SUZUKA 300KM RACE レースレポート

2021/08/23



 

8月21日(土)から22日(日)の2日間にかけて、5月開催が延期となったスーパーGT第3戦「SUZUKA GT 300KM RACE」が開催されました。前戦もてぎラウンドで優勝を飾ったmuta Racing EVORA MCは、加藤寛規/阪口良平選手と共に真夏の鈴鹿ラウンドを戦い抜き、300kmのレースを9位で完走しました。


■公式練習走行

土曜日の9:00から開催された公式練習走行は、今回予選Q1を担当する加藤寛規選手が最初にmuta RACING LOTUS EVORA MC(以下SGT EVORA)のステアリングを握りました。第4戦での優勝から、サクセスウェイトが63kgとなったSGT EVORA。チームはまずこのハンディと戦いながら、予選に向けたタイヤ選択とマシンセッティングを行いました。シリーズがちょうど折り返しとなる今大会は、ウェイト搭載量の少ないマシンたちが速さを見せていました。しかし序盤でトップに立ったのは、SGT EVORAともチャンピオン争いを展開している♯61 SUBARU BRZ GT300でした。そのタイムは昨年のポールポジションタイム(TOYOTA GR SPORT PRIUS PHV/1分58秒189)を上回る、1分58秒127をマークしていました。かたやSGT EVORAは、2分フラットからの滑り出しとなりました。その走りには前述したサクセスウェイトに加え、コンディションに対するタイヤのマッチングが大きく影響していました。しかしチームはここからSGT EVORAのセッティングを短時間で煮詰め、18周目になるとそのタイムは1分59秒台に突入。そのままアタックを続けた加藤選手は、最終的に1分59秒349までタイムを縮めました。決勝のロングランを想定した走行は阪口選手が担当し、2分01秒886をマーク。一発の速さにはやや欠ける状況ながら、決勝レースにおいてはその期待が高まりました。





■公式予選1回目

14:30から始まった公式予選には、29台のマシンがエントリー。SGT EVORAはBグループからの出走となり、13台のライバルたちとQ2進出をかけて戦いました。Q1-Bを担当した加藤選手は、3周をかけてタイヤをウォームアップすると、翌周からアタックを開始。ここでまず1分58秒471のタイムを刻むと、一躍3番手に躍り出ました。それは公式練習走行の走りからは想像がつかないほどの、みごとなアタックでした。加藤選手は公式練習走行を終えたあとに状況をフィードバックし、これをチームが素早く改善したのです。特にアドヴィックスと共に開発を進めるブレーキ制御の調整によって、SGT EVORAはさらなるパフォーマンスを引き出していたのでした。そして翌周は、1分58秒364までタイムを更新。かたやライバルたちも同様にタイムを更新してきたため、SGT EVORAの順位は最終的に5番手となりました。しかしながらSGT EVORAは、当初の予想を超える速さを見せて、みごとに予選Q1を突破したのでした。




■公式予選2回目

GT500の予選Q1を終えたあと、GT300クラスの予選Q2が開催されました。
これを担当した阪口選手は、加藤選手と同様に4周目からアタックを開始。ここでまず、1分59秒488を刻みました。
しかし翌周は1分58秒856と伸び悩み、7番手で予選を終えました。予選後に阪口選手は「公式練習走行に比べてりマシンがかなり曲がるようになっていて、これにニュータイヤのピークを合わせきるることができず、S字のひとつめでリズムを崩してしまいました。5番手は狙いたかったのですが……」と悔しさをにじませました。ポールポジションは公式練習走行でも抜群の速さを見せた♯61 SUBARU BRZ GT300(山内英輝/井口卓人 組)が、1分57秒322のタイムで獲得しました。




■決勝レース

日曜日の決勝レースは、事前のウォームアップ走行で♯18 NSX GT3が不運にも130Rでクラッシュを喫し、予定より10分進行がディレイしました。幸いドライバーは無事でした。心配された天候は、レース直前に空が曇り始め、1コーナー側では雷の音が響く状況でしたが、かろうじてドライコンディションを保ったまま、52周(GT500換算)レースがスタートしました。
第一スティントのドライバーを務めたのは加藤選手でした。7番手からスタートしたSGT EVORAは、後ろに続くGT3勢に追い立てられながらも、序盤の混乱にも飲み込まれることなくオープニングラップを切り抜けました。レースは4周目のシケインで、GT500クラスのポールシッターであり、トップを走る♯64 HONDA NSX GTがマシントラブルからコースオフ。そのままクラッシュパッドに突っ込む事態となり、ここでFCY(フルコースイエロー)が入りました。こちらも、ドライバーは無事でした。そしてマシンの回収作業が長引く状況から、セーフティカー導入に。GT500/300クラス共に隊列を整えたあと、11周目にレースが再開されました。





レース再開後は、後ろにぴたりと着けていた♯30 TOYOTA GR SPORT PRIUS PHV(織戸 学選手)が、11周目にSGT EVORAをパス。加藤選手もその後は2分3秒台をコンスタントに刻み8番手をキープし続けましたが、そのペースは想定したレースラップよりも若干遅い、苦しい状況でした。そこでチームは18周目を迎えると、いち早くSGT EVORAをピットインさせました。これはここ数年鈴鹿ラウンドでは、序盤にセーフティカー導入が導入されるからでした。それによる混乱や、周回遅れとなるリスクを避けて、SGT EVORAのペースを維持し続けようとしたのです。こうしてチームはドライバー交代と給油を済ませると、そのままSGT EVORAをコースへと送り出しました。前回同様タイヤ無交換を選んだのは、ペースこそ若干遅いものの、タイヤのフィーリングは変わらないというインフォメーションを加藤選手から得ていからでした。こうしてタイムロスを最小限に抑えたSGT EVORAは、22番手でコースへと復帰しました。





第二スティントを担当した阪口選手は、2分4〜5秒台というペースに苦しみながらも、徐々にその順位を上げて行きました。そして32周目に12番手まで上り詰めると、上位4台が一斉にピットインした状況から、33周目には8番手までポジションを回復しました。しかし終盤になると、ピットインを終えたライバルたちが猛追を開始。阪口選手も懸命に走り続けましたが遂に47周目、♯55 NSX GT-3(佐藤 蓮選手)と、♯56 日産GT-R(J.P.デ・オリベイラ選手)がSGT EVORAをパス。その順位は、10番手に後退しました。しかし前を走る♯61 SUBARU BRZ GT3(井口 卓人選手)との差は変わらず1秒以内にあり、まさに最終ラップでこれを仕留めて、9番手でフィニッシュしました。レースは序盤からトップに立った♯244 TOYOTA GR SUPRA(三宅淳詞/堤 優威 組)が今季初優勝を遂げ、シリーズ争いでもトップに立ちました。今回9位入賞を果たしたことでmuta Racing INGINGは5ポイントを獲得。また加藤/阪口両選手は、2ポイントを獲得。チーム/ドライバーズランキング共に、6位を維持しました。









■チーフエンジニア 渡邊信太郎

「今回は、かなり苦しい戦いでしたね。もう少しレースラップにおける速さが欲しかった。タイヤ選択としては、温度レンジ的には全く問題はなかったのですが、根本的なグリップが足りていなかったのだと思います。最後55号車に抜かれてしまったのは残念でしたが、10番手まで落ちた順位を阪口選手がひとつ挽回してくれたのは良かったですね。チャンピオンシップを争うライバルたちの多くがポイント圏外だったことを考えると、これは大きなポイント獲得だと思います。また地味に重たくなってしまいましたが(苦笑)、次戦も頑張ります!」
■ドライバー 加藤寛規

「走り出してすぐに、『これはついて行くのがやっとだな…』というペースでした。初めて使うコンパウンドだったこともあるのですが、セットアップというよりは、タイヤの選択を外してしまったかな……という感じです。ただペースが良くないなかでもポイントを取れたのは、とても大きなことなんですよ。レースウィークの流れを見ていても各担当者同士のコミュニケーションがきちんと取れていますし、いまチームは非常によい状態です。あとはエヴォーラに対して、どれだけブリヂストンタイヤを合わせ込めるか。タイヤの理解度を深められるかだと思います。最後に良平君が抜いてきてくれたのは、さすがでした!」
■ドライバー 阪口良平

「ピットアウトして30号車(TOYOTA GR SPORT PRIUS PHV)と4号車(メルセデスAMG GT3)の前には出られたのですが、相手のペースが早く防ぎきれませんでした。自分としては61号車(SUBARU BRZ GT300)にずっと前を塞がれる状態だったので、これも苦しかったですね。だからどうしても、61号車だけは抜いて終わりたかった。最後の最後でそれができたことは、自分にとっても大きかったです。今回はとても苦しい戦いでしたが、開幕戦以外全戦でポイントを獲得できているのは、チーム力のおかげだと思います。次戦(SUGOラウンド)もがんばります!」