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【SGT-EVORA】SUPER GT 2021 第1戦 IN OKAYAMA INTERNATIONAL CIRCUIT, OKAYAMA 300KM RACE レースレポート

2021/04/14


※撮影のため、マスクを一時的に外しております。


4月10日(土)から11日(日)の2日間にかけて、2021年度のスーパーGT開幕戦となる「OKAYAMA GT 300KM RACE」が、岡山国際サーキットで開催されました。

GT300クラスでmuta RACING LOTUS EVORA MCを走らせるインギングモータースポーツは、加藤寛規/阪口良平選手と共に、実に2年ぶりの開催となる岡山ラウンドを、全力で闘いました。


■公式練習走行

土曜日の9:45から始まった公式練習走行では、最初に加藤選手がmuta RACING LOTUS  MC(以下 SGT EVORA)のステアリングを握りました。今年からブリヂストンタイヤを装着するSGT EVORA。まずチームは持ち込んだタイヤのうち、ハード側のコンパウンドからそのパフォーマンスを確認しました。コースインした加藤選手は、6周目に1分27秒322をマークして6番手に躍り出ると、8周目には1分26秒964を刻んで3番手に浮上。その後はライバルたちもタイムを上げて行きましたが、SGT EVORAもその順位をトップ10圏内に止め健闘しました。ここからチームはマシンをいったんピットへと戻し、空力バランスを変更。さらに本命タイヤとなるソフト側のコンパウンドを投入し、23周目には加藤選手が1分26秒415のタイムで、SGT EVORAの順位を6番手まで押し戻しました。その後赤旗中断になったタイミングで、チームはドライバーを阪口選手へとスイッチ。ここで短い周回数ながら阪口選手も、1分26秒505のセカンドベストを刻みました。GT300クラスの占有走行は引き続き阪口選手が担当し、予定されたメニューを順調に消化。公式練習走行をトラブルなく無事に終えました。





■公式予選1回目

14:00から開催された第一回目の公式予選(Q1)は、29台のマシンがA/Bふたつのグループに別れて戦いました。SGT EVORAはAグループから出走し、加藤寛規選手がそのドライバーを務めました。チームはこの予選を前に、ひとつの大きなチャレンジをしていました。公式練習走行での走りを省みて、SGT EVORAのマシンセッティング、具体的にはサスペンション・ジオメトリーを変更したのです。通常であれば予選の前に、公式練習走行で構築したセッティングを、大きく変更することなどまずありません。しかしチームはひとつでもその順位を高めるべく、これに着手。予選が始まるぎりぎりまで時間をかけて、そのジオメトリーを変更したのでした。これに対して渡邊チーフエンジニアは「ドライバーともじっくりと話し合った上での決定でした。今後はもう公式テストがなく、大幅なマシンのポテンシャルアップは望めません。そしてシーズンが進むほどに、大胆なセッティング変更も行えなくなります。であればまだレースが始まったばかりのこの開幕戦で、考えてることを試そう! という結論になったんです」と述べました。

そしてこの判断は、見事に結果となって現れました。3周目までじっくりとタイヤをウォームアップさせた加藤選手は、翌周に渾身のアタックを披露。1分25秒887の好タイムをマークして、いきなりトップを奪ったのです。その直後に♯244 TOYOTA GR Supra(堤 優威選手)が1分25秒866を叩き出し、このタイムれを塗り替えたものの、その差は僅かに0.021秒でした。そしてこの順位は最後まで変わることなく、SGT EVORAは2番手で予選Q1を突破したのでした。






■公式予選2回目(Q2)

14:53から始まった予選Q2は、阪口選手が担当しました。阪口選手は3周目までタイヤを暖めると、翌周からアタックラップに突入。まず1分26秒424のタイムで、9番手に躍り出ました。さらに翌周は、セクター1及びセクター2で、チームベストのタイムをマーク。しかしこのまま行けば25秒台前半は確実かと思われた矢先、SGT EVORAに思いも寄らぬ不運が降りかかりました。SGT EVORAが最も得意とするセクター3、そのダブルヘアピンで一台のマシンがアタックを前にスロー走行。これに影響される形で後続が車速を落とし、阪口選手は前車に追いついてしまったのです。こうして前走車にラインを塞がれる形となったSGT EVORAは、大幅にタイムロス。さらに最終コーナーではこれをよける状況となり、タイムも1分26秒246で打ち止めに。Q1とは全く対称的な予選となってしまったのでした。この結果からSGT EVORAの順位は、8番手となりました。かたや25秒台の激闘が繰り広げられたトップ争いは、最後に1分25秒275のタイムを叩き出した♯11 日産GT-R GT3が獲得。これは平中克幸選手にとって、実に’14年以来、3度目となる嬉しいポールポジションとなりました。







■決勝レース

日曜日の決勝レースは13:30分からスタートし、2周のウォームアップ走行の後、82周(GT500換算)で争われました。第一スティントのドライバーを務めた加藤選手は、前後をGT3マシンに囲まれながらもポジションをキープし、序盤から1分29秒台前半で快走しました。5周目なると、ヘアピンコーナーで追突によるアクシデントが発生。この状況を見て7周目には、セーフティカーが導入されました。そして隊列が整えられると、10周目にレースは再開。ここで加藤選手は車間を詰めた後続の♯55 NSX GT3(高木真一選手)にストレートでオーバーテイクを許したものの、その後混戦のない状況ではさらに1分28秒中盤へとタイムアップを果たし、トップグループと変わらない走りを披露しました。しかし18周を過ぎた当たりから、SGT EVORAのペースには陰りが見え始めました。そして20周を超える頃には、その落ち幅がさらに大きくなってきました。その理由は、想定を超えた気温の上昇でした。既に決勝レースが始まる時点で、路面温度は40度を超えており、SGT EVORAだけでなく、ライバルたちもこの状況に苦しんでいたのです。





しかしチームはこの状況を事前に想定しており、作戦を切り替えた加藤選手は、義務周回数をクリアした後いち早くピットイン。メカニックたちの迅速なピット作業によってSGT EVORAは、トップを走る♯56 日産GT-R GT3(藤波清斗選手)の前でコースへと復帰したのでした。さらに30周目になると、同じく早めのピットインを行ったマシンがアウトラップでスピン。マシンは自力でピットへと戻りましたが、この際コースにはデブリ(パーツの破片)がまき散らされました。そしてこの状況を察したマシンたちによって、ピットレーンは大混雑となりました。それはセーフティカーが導入され、ピットがクローズしていまう前に、ドライバー交代を行っておく必要があったからです。そしてこうした状況も、SGT EVORAには有利に働きました。既に1回目のピット作業を終えた状態でその順位は、実質4番手までジャンプアップしてたのです。レースは37周目に再開。その直後こそストレートで♯11 日産GT-R GR3(平中克幸選手)に抜かれたものの、阪口選手は5番手から素晴らしいペースで走り続けました。高い路面温度に対応するハードコンパウンドのタイヤを履きながら序盤を1分29秒台前半で走り、さらには1分28秒台に突入。そして44周目に刻んだ1分28秒488のタイムは、トップを走る56号車よりも速いタイムでした。






しかし悲劇は、46周目に訪れました。ヘアピンコーナーを抜け、リボルバーコーナーをターンしていたそのとき、他車と接触してコントロールを失ったGT500車両が、SGT EVORAの左側面に衝突してきたのです。このアクシデントによってSGT EVORAはピットインを余儀なくされました。しかもダメージが予想以上に大きく、そのままリタイアとなってしまったのでした。レースは4番手からスタートした♯56 日産GT-R GT3(J.P.デ・オリベイラ/藤波清斗 組)が、44周目にトップに立つとそのままポジションを一度も譲ることなくチェッカー。昨年王者の貫禄を見せつけて優勝を飾りました。2位は♯65 メルセデスAMG GT3(蒲生尚弥/菅波冬悟 組)、3位は♯52 TOYOTA GR Supra(吉田広樹/川合孝汰 組)が入賞しました。

今回は非常に残念な結果となってしまいましたが、インギングモータースポーツとmuta RACING LOTUS MCは、ベストを尽くしました。次戦は5月3日(土)から開催される「FUJI GT 500KM RACE」です。チームは一丸となってこの長丁場を戦い抜きますので、応援よろしくお願い致します!





■チーフエンジニア 渡邊信太郎

「決勝レースは想定を超えた路面温度の高さとなり、加藤選手は相当厳しい状況だったと思います。しかしそれでも何とか持ちこたえてもらえたので、トップと同一周回でコースに復帰することができました。これは大きかったですね。そして第2スティントではハード目のタイヤを使ったわけですが、ここでは阪口選手のペースが非常に良かった。ロングランでの速さが想定できただけに、今回の結果は非常に残念です。富士ではフロントロー、どんなに悪くてもセカンドローを取らなければパワーのあるライバルたちには勝てないと思うので、がんばります。応援よろしくお願いします!」

■ドライバー 加藤寛規選手

「決勝は正直どうなっちゃうんだろう!? と思っていました(苦笑)。実際数珠つなぎの中でもなんとか走れてはいたのですが、抜くまでには至らない。だから作戦を切り替えました。レースは残念な結果となってしまいましたが、阪口選手は悪くないですし、何より体が無事で良かったです。そして今回闘ってみて、ライバル以上に自分たちのBoP(性能調整)と闘わなくてはいけない、と強く感じました。この重さを克服する方法をチームでじっくり話合って、次戦に臨みたいと思います」

■ドライバー 阪口良平選手
「決勝はロングランということもわかっていたので、序盤で抜かれても焦らずに、後半燃料が軽くなる状況を待とうと考えていました。トップ集団のタイヤがたれてきても、こちらは速さを維持できると思っていましたから……残念です。ただあのアクシデントは、どうにも避けようがありませんでした。とはいえ初めてのジョイントチームで、開幕戦からトップ集団での争いができたことは、前向きに捕らえたいと思います。次戦はロータスが勝ってる富士ですし、楽しみです!」