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SUPER GT 2020 第3戦 IN SUZUKA CIRCUIT SUZUKA GT 300KM RACE レースレポート

2020/08/24


 

8月22日(土)から23日(日)の2日間にかけて、スーパーGT 第3戦「SUZUKA GT 300KM RACE」が無観客試合として開催されました。

第2戦富士で今季初優勝を飾ったシンティアム・アップル・ロータス(SGT EVORA)は、ドライバーズランキングにおいて20ポイントを獲得したことにより今回新たに60kgのウェイトを搭載。さらに通常コースの規定として30kgを上乗せした、合計90kgのハンディを背負って闘うことになりました。コーナリングスピードが最大の武器であるマザーシャシーにとってそれは、まさに試練の闘いでした。しかしカーズ東海ドリーム28はこの一戦に備え、ファクトリーでマシンバランスを入念にセットアップ。加藤寛規/柳田真孝選手と共に、ホームコースである鈴鹿ラウンドに挑みました。

 


 

■公式練習走行

土曜日一番最初の走行となる公式練習走行は、いつになく厳しいセッションとなりました。

気温は午前10時の段階で既に33度を記録し、路面温度は42度に。そして最終的にはこの路面温度が、48度まで上昇するコンディションとなったのです。ここで加藤選手は、まず90kgのウェイトに「これまでにない重さ」を感じたとコメントしました。しかしながらここでSGT EVORAは、決勝レースを想定した走りにおいて、狙い通りのラップタイムを記録します。

しかし練習走行の後半、予選を想定した走行前にマイナートラブルが発生。ここで加藤/柳田 両選手は満足なアタックができない状況となり、記録的には加藤選手が刻んだ2分00秒253のタイムがチームベストに。その順位は、21番手に沈みました。そしてGT300クラスのトップは、1分58秒866のタイムを刻んだ♯55 NSX GT3(高木真一/大湯都史樹 組)が獲得しました。

 


 

■公式予選1回目

14:30から始まった公式予選1回目(Q1)は、30台のマシンがA/Bグループに分かれてQ2進出を目指しました。Bグループに組み込まれたSGT EVORAをドライブしたのは、加藤選手。当初は柳田選手がアタックする予定でしたが、公式練習走行でまったく予選シミュレーションが行えなかった理由から、大命題となるQ1突破をかけて、加藤選手がこれを担当することになったのでした。10分間の短い予選のなか、路面温度の高さから「1周にかけていた」という加藤選手。その計測2周目にSGT EVORAは公式練習走行のタイムを大きく上回る1分59秒406のタイムを叩き出し、いきなり3番手に躍り出ました。その後ライバルたちがタイムアップを果たしたことで、順位は一時8番手に。しかし一台のマシンがペナルティによってベストタイムを抹消され、7番手でQ1を突破しました。

 


 

■公式予選2回目

公式予選2回目(Q2)は、15:23からスタート。柳田選手はQ1を勝ち抜いた16台のマシンたちと、決勝グリッドをかけて闘いました。今回初のニュータイヤによるアタックとなった柳田選手は、加藤選手と同じく計測2周目にアタック。まずここで1分59秒511を刻むと、SGT EVORAは8番手に躍り出ました。「タイヤ的には計測2周目がベスト。ただ体の慣れもあって、少し置きだけに行ってしまったことが悔しいです」と語った柳田選手は、翌周もアタック。しかし二度目のアタックはわずかにタイヤのピークが過ぎ、タイム更新は叶いませんでした。そして最終的なグリッドは11番手に。しかしチャンピオンシップを闘う上では、十分にポイント獲得を狙える位置からのスタートとなりました。

 


 

■決勝レース

迎えた日曜日の決勝レースは、予定通り13:00からフォーメーションをスタートし、52周(GT500換算)の周回数で争われました。そして今回は、1レースでセーフティカーが3回も導入される、大波乱の展開となりました。スタートドライバーを務めたのは加藤選手。レースはオープニングラップから♯30 TOYOTA GR SPORT PRIUS PHV(永井宏明選手)が接触によって押し出される形となり、これを回収するためのセーフティカーがいきなり導入されました。レースは5周目から再開。ここで前後をGT3勢に挟まれなていた加藤選手は、90kgのウェイトを背負ったSGT EVORAを巧みに走らせ、ポジションをキープ。後続車両とは常に1.5秒ほどの差を保ちながら周回を重ねます。さらに第一スティントの終盤ではポジションをひとつ上げ、10番手となりました。

2度目の波乱が起きたのは、16周目でした。順調に周回を重ねていたSGT EVORA。チームはここで早めのピットインを予定していました。規定集回数の1/3をクリアしていても、タンク容量の関係からまだピットインできないGT3勢。これに対して燃費のよいSGT EVORAはいち早くタイヤ交換と給油を済ませ、GT3勢が続々とピットインするタイミングで順位を上げる作戦を立てていたのです(アンダーカット)。

しかしながらまさにこのタイミングで、バックストレート上に置き去りにされたパーツ(GT500マシンのボンネットでした)を回収するべく、今大会2度目のセーフティカーが導入されてしまったのでした。

ピットクローズが解除されるとSGT EVORAは21周目にピットイン。

 


 

しかしGT3勢も周回数を引き延ばせたことにより、予定通りのピットインが可能となり、SGT EVORAが予定していたアンダーカット戦略のアドバンテージは消失。さらにタイヤの暖まりきらないアウトラップでSGT EVORAはGT3勢の集団に飲み込まれ、順位を落としてしまうのでした。しかしここからが、今季におけるSGT EVORAの強さを表す闘いとなりました。

レースラップで柳田選手は2分1秒759のベストラップをマークすると、その後も混み合った状況のなかを2〜3秒台で周回。そして27周目、コース上のバトルから押し出された♯21 Audi R8 LMS(川端伸太朗選手)を救出するべく、3度目のセーフティカーが導入に。ピットクローズが解除されると、ロングスティントをしていた車輌が続々とピットに押し寄せ、SGT EVORAは12番手にそのポジションを上げたのでした。

ここからのサバイバルレースでは、柳田選手のキャリアが大いに発揮されました。コース上では、タイヤ無交換を敷いたライバルの失速が顕著に。特に2番手争いは激化し、46周目のデグナーカーブでは、急激な失速を見せた♯56 日産GT-R GT3(J.P.デ.オリベイラ選手)に♯55 ホンダNSX GT3(大湯都史樹選手)が追突するアクシデントが発生。この間に柳田選手は、6番手にまで順位を上げました。そしてハイライトは、49周目に訪れました。

ペースを崩さなかったSGT EVORAはついに3位グループを捕らえます。このときまず混戦のなか、ダンロップコーナーで♯65 メルセデスAMG GT3(蒲生尚弥選手)がスピンアウトし、SGT EVORAの順位は5位に。さらに柳田選手はヘアピンコーナーで勝負をしかけましたが、ライバルもギリギリの状況で踏ん張りました。圧巻は、スプーンコーナーでの激闘でした。柳田選手はひとつめのコーナーを伸びやかにクリアしたあと、ふたつめのターンで後ろから状況を伺い、耐えきれなくなった♯61 SUBARU BRZ GT300(井口卓人選手)のインへ。アウト側からの選択肢もあるなか、それは一瞬の素早い判断でした。こうしてSGT EVORAは集団の前に出ると、高速の130Rコーナー、シケイン、最終コーナーをクリアしてチェッカー。なんと90kgのウェイトを積みながら、3位入賞を果たしたのでした。レースはピット作業を素早く済ませてトップにたった♯11 日産GT-R(安田裕信/平中克幸 組)が優勝を飾りました。

この結果からカーズ東海ドリーム28はチームポイントで首位から3ポイント差の2位に。同じくドライバーズランキングでも、4ポイント差で2位につけました。第4戦は9月12日(土)から開催されるツインリンクもてぎラウンド。マザーシャシーにとっては非常に厳しいストップ&ゴーのコースとなりますが、チーム一丸となってがんばりますので、応援よろしくお願いします!


 


 

■チーフエンジニア 渡邊信太郎

「今回はウェイトを搭載していることもあり、一発を出せない状態。そんな中で加藤選手がQ1を突破してくれたことがまず素晴らしかったと思います。そして決勝レースでは、まさに“柳田劇場”が展開されましたね。我々が作った決勝に強いマシンで、見事にタイヤをもたせて、予想以上の結果を勝ち取ってくれました。うまく行って5位、正直入賞が精一杯と思っていただけに、今回の3位は本当に嬉しいです! シリーズを闘う上で、とても価値ある3位でした」

■ドライバー 加藤寛規選手

「今回のレースは柳田選手に感謝ですね! 16周目のピット作戦ができなかったときは、本当にどうなることかと思いましたが、素晴らしい走りをしてくれました。自分のスティントとしては、抜き所のないレースで本当に苦しみましたが、GT500との交錯タイミングを使ってひとつ順位を上げることができました。次戦はウェイト感度が非常に大きなコース、もてぎです。苦しい闘いになるとは思いますがしっかり切り替えて、闘いたいと思います。応援よろしくお願いします!」

■ドライバー 柳田真孝選手

「今回印象に残ったのは予選です。加藤選手の走りは、本当にすごかった。その走りに触発されて、ボクも決勝レースをがんばれました。レースではこっちのペースが良いのはわかっていたので、ライバルのタイヤが厳しくなるときを狙いました。エヴォーラはコーナーでしか抜き所がないうえに、あまり同じ場所で抜くと警戒されるので、色々なコーナーで抜くように工夫しました(笑)。でも、マシンも本当にギリギリでした。トラブルが絶妙に回避できていることを考えても、チームは今良い流れに来ていると思います。次戦もがんばりますので、応援よろしくお願いします!」