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SUPER GT 2020 第8戦 IN FUJI SPEEDWAY, FUJI 300KM RACE レースレポート

2020/12/02





11月28日(土)から29日(日)の2日間にかけて、スーパーGT 第8戦「FUJI GT 300KM RACE」が開催されました。コロナ禍で開催が危ぶまれた2020年シリーズも、この富士ラウンドでいよいよ最終戦を迎えました。カーズ東海ドリーム28とシンティアム・アップル・ロータス(SGT EVORA)は第7戦の結果から、惜しくもシリーズチャンピオン争いに残ることはできませんでした。しかしシリーズランキング争いは、まだ闘いのまっただなか。初優勝をもぎとったこの富士スピードウェイで有終の美をかざるべく、チームは一丸となって最後の闘いに挑みました。





■公式練習走行

サクセスウェイトが全て降ろされる今大会は、チームにとって正念場となる闘いでした。シーズン序盤、サクセスウェイトを搭載しない状態での走りを再現することはできるのか? そこにはまず、路面温度との闘いがありました。

9:00ちょうどから始まった公式練習走行は、まず加藤寛規選手がマシンチェックを行った後、柳田真孝選手が予選に向けたメニューを積極的に消化しました。今回持ち込んだタイヤは、特性違いで2種類。そのどちらがより低い気温にマッチし、グリップ性能を発揮し続けられるのか? これを確かめることがひとつのテーマでした。タイヤのウォームアップを終えた5周目、まず柳田選手は1分37秒356のタイムをマークして13番手に。その後も順調に周回を重ね、7周目には1分36秒685を記録して8番手までその順位を上げました。その後は加藤選手に交代し、持ち込みタイヤの比較と決勝レースを想定したメニューをこなして走行を終了。最終的な順位は9番手となりました。暑い時期にはストレートスピードが重視されるこの富士でも好成績を残したSGT EVORA。しかし第5戦以降は気温の低下によってタイヤが路面のタイヤマーブルや埃を拾う“ピックアップ”症状が激しくなり、これに悩まされ続けていました。そして迎えた今回の最終戦は、比較段階でソフト側のタイヤにピックアップ症状の懸念が生じたため、チームはハード側のタイヤを選択。グリップレベルを僅かに落としてでも、決勝レースを見据えたチョイスで予選に臨みました。




■公式予選1回目(Q1)


午後から始まった公式予選、SGT EVORAはQ1ーBグループに出走し、柳田選手がそのドライバーを務めました。10分間という短い時間のなか、柳田選手は着実にタイヤをウォームアップして、4周目からアタックを開始。まずここで1分36秒704のタイムを出すと、SGT EVORAはトップに躍りました。その後はライバルもタイムを上げ始め、順位は徐々に下がりつつありました。しかし翌周のアタックでは1分36秒307へとタイムを上げて、4番手を獲得。無事に予選Q1を突破したのでした。


■公式予選2回目(Q2)


14:08から始まった公式予選Q2では、Q1A-B予選を勝ち抜いた16台で争われました。これを担当した加藤選手は、柳田選手と同様に4周目からのアタックを狙いましたが、巡り合わせが悪く翌周からアタックを開始。残り時間があと僅かという状況ながらも僅か1周のアタックで1分36秒174のベストラップをマークし、8番グリッドを獲得することができました。ポールポジションは、1分34秒665という驚異的なタイムを刻んだ♯52 GB GR Supra GT(川合孝汰選手→吉田広樹選手)が獲得しました。予選上位を6位までブリヂストン勢とダンロップ勢が2分するなか、シンティアム・アップル・ロータスもヨコハマ勢としては2番手のタイムをマークしました。





■決勝レース


迎えた日曜日の決勝レースは、予定通りに13:00からフォーメーションラップがスタート。いつもより1周多いウォームアップ走行が行われた後、300km/65周(GT500換算)のレースがスタートしました。8番グリッドから今年最後のレースに臨んだSGT EVORA、スタートドライバーは加藤選手が務めました。加藤選手はオープニングラップこそ後方から迫るLEXUS RC F GT3に先行を許したものの、翌周すぐにこれを抜き返してポジションを奪取。その後は燃料を満載した状況ながらも1分38秒台をコンスタントにマークして、その順位を守り抜きました。




ラップタイムに異変が訪れたのは、8周を過ぎた頃でした。その推移はコンスタントラップよりも2秒ほど遅くなり、そこから徐々にタイムが落ちて行ったのです。状況としては、やはり決勝の低い気温にタイヤがマッチングしませんでした。グリップレベルを抑えることでピックアップ症状は改善されたものの、今度はタイヤが路面を捕らえきれなくなり、レースラップを維持し続けるとゴムが痛んでしまう状況に陥ってしまったのです。加藤選手はこの苦しい状況をなんとか持ちこたえようとしましたが、それも敵わず13周目にピットインを強いられました。しかし周回数は全体の三分の一を消化しきれておらず、加藤選手は再びコースへ。順位も27番手まで後退し、ここで事実上の勝負権は失われました。





28周目で交代した柳田選手も、同じ症状に悩まされました。それでもタイヤを壊さず残り30ラップを走り抜いたのは、見えない敢闘賞でした。最終的にSGT EVORAは23位でチェッカーを受け、2020年のレースシーズンを闘い抜きました。優勝は♯52 GR Supra GT(吉田広樹/川合孝太汰 組)がタイヤ無交換作戦を敷いて完璧なポール・トゥ・フィニッシュを決めました。またシリーズチャンピオンは、予選7番手から強烈な追い上げを見せた♯56 日産GT-R GT3(藤波清斗/ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ組)が2位でゴールし、シリーズチャンピオンを獲得しました。こうして2020年のスーパーGTは終了しました。


最終的なドライバーズランキングは10位、チームランキングは9位となりました。振り返ると今シーズンは7月からレースが開幕し、なおかつマザーシャシーにとっては得意とするコースが鈴鹿以外ないという、非常に変則的で厳しい闘いの連続でした。しかしながらシンティアム・アップル・ロータスは開幕戦(富士ラウンド)で予選3位を達成し、第2戦では同じく予選3位から、悲願の初優勝を遂げることができました。また第3戦(鈴鹿ラウンド)では粘り強い走りからの3位獲得と、シリーズチャンピオン争いにも加わることができました。開幕戦のトラブルを除き、それ以外はノントラブルで全てのレースを完走。渡邊チーフエンジニアも「ドライバーは完全にノーミス。メカニックもノントラブルで、ピットワークもノーミスでした。こうした環境で1年戦えたことを、非常に嬉しく思います」と力強く述べてくれました。



■渡邊信太郎チーフエンジニア
「今回はグリップレベルを落としてでも硬いタイヤを使うことで、ピックアップ耐性を高めることができました。しかし決勝は予選日よりも気温が下がってしまったことで、さらにグリップレベルが落ちてしまいました。これによってタイヤがささくれて痛み、序盤に交換せざるを得ませんでした。ドライバーもその状況は理解していたのですが、遙かに予想を上回る摩耗の激しさでした。今シーズンは例年とまったく違う悩みが出た年でした。ただ気温の高い状況では、非常に素晴らしい闘いができた。もし来季があればこのデータを活かして、チャンピオンシップを勝ち取りたいと思います。一年間、応援ありがとうございました!」

■ドライバー 加藤寛規選手

「タイヤを壊さないようにペースを落としていたんですが、ちょっとレースにはならなかった……。それが悔しいですね。土曜日まではなんとか想定内に収まったのですが、決勝はボクらも未知の領域でした(苦笑)。ただ今年は後半こそ失速してしまいましたが、柳田選手が加入してくれたことでチームも強くなり、ロータスとしても初めて優勝することができました。個人的には、とてもよいシーズンだったと思っています。一年間、ありがとうございました」

■ドライバー 柳田真孝選手

「決勝レースは加藤選手の状況を見ていて、プッシュできないのはわかっていました。ただ残り30ラップあったので、(タイヤを持たせ続けるのは)大変でした。本来スーパーGTというレースは、最後までプッシュして走らなければいけないレース。自分としてもここまで抑える闘いは初めてだったので、これは改善しなければいけないです。タイヤだけに責任を負わせず、自分たちでもまだまだやるべきことはあると思います。カーズ東海ドリーム28は素晴らしいチームです。もし来季があるのなら、自分たちが成長するためにも、こうした部分を練って行きたいですね!」

そして何より、ロータスを応援してくださる声援が、チームの力になりました。一年間、カーズ東海ドリーム28を応援頂き、誠にありがとうございました!