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【SGT-EVORA】SUPER GT 2021 第4戦 IN TWIN RING MOTEGI, MOTEGI 300KM RACE レースレポート

2021/07/19



7月17日(土)から18日(日)の2日間にかけて、スーパーGT第4戦「MOTEGI GT 300KM RACE」が開催されました。

今大会は第3戦鈴鹿ラウンドが延期(開催地である三重県が、感染症の蔓延防止措置適応地域となったため)されたことを受け、第4戦が先に行われる異例のスキップ開催となりました。そしてこの約2ヶ月半ぶりとなるもてぎラウンドに、muta RACING LOTUS EVORA MCを走らせるインギングモータースポーツはチーム一丸となって臨み、嬉しい今季初優勝を勝ち取りました。

 



 

■公式練習走行

土曜日の9:20から1時間55分を使って開催された公式練習走行では、まず最初に阪口良平選手がmuta RACING LOTUS EVORA MC(以下SGT EVORA)のステアリングを握りました。第2戦の富士では予選5番手を獲得しながらも、決勝でのレースペースが上がらずに苦しんだSGT EVORA。チームはこの反省を踏まえ鈴鹿でのプライベートを1回行い、ブリヂストンタイヤとも入念な協議を重ねて、ツインリンクもてぎに乗り込んでいました。今回予選のマシンセッティングを担当した阪口良平選手は、予定されたメニューを着実にこなしながら、序盤からテンポよく周回しました。マシンの状態を確かめながらも5周目には49秒台に突入し、そこから1分49秒432までタイムを伸ばして、まず全体9番手に浮上します。そしていったんマシンをピットへと戻すと、調整を行って再びコースイン。予選を想定したその走りは16周目に1分49秒084のタイムを刻み、翌周には48秒台に突入。18周目には1分48秒811のベストタイムをマークして、5番手に躍り出ました。その後は加藤寛規選手がマシンを引き継ぎ、決勝を見据えたロングラン走行を順調に消化。この間にライバルたちが躍進したことから順位は7番手となりましたが、マシンは好調を保ったまま公式練習走行を終えました。

今大会マザーシャシーであるSGT EVORAは再びBoP(性能調整)によってウェイトが+80kgへと戻されており、なおかつ予想以上の気温上昇から持ち込みタイヤの作動温度レンジも心配されていましたが、中間加速性能が勝敗に大きく関係するツインリンクもてぎでSGT EVORAが6番手に立ったことは、予選への明るい材料となりました。公式練習走行でトップに立ったのは、1分48秒271をマークした♯88 ランボルギーニ・ウラカンGT3(小暮卓史/元嶋佑弥 組)でした。

 



 

■公式予選1回目

14:15からスタートした第一回目の公式予選(Q1)は、29台のマシンがエントリー。ふたつのグループに分かれて争われるノックアウト方式の予選で、SGT EVORAはBグループから出走しました。Q1-Bを担当したのは、阪口選手でした。今回は公式練習走行でも速さを見せていた阪口選手。しかしそこには、非常に厳しい戦いが待ち受けていました。コースオープンになると、ライバルたちはいち早くアタックを開始。1分49秒前半から始まったタイムアタック合戦は、序盤で早くも48秒中盤に突入する、激しい展開となりました。いっぽうSGT EVORAを駆る阪口選手は、3周かけてじっくりとアタックの環境を整えていました。そしてアタックラップとなった4周目。コントロールラインを通過したSGT EVORAが刻んだタイムは1分49秒242と伸び悩み、ぎりぎりQ1の当落線上となる8番手につけました。なおかつライバルたちはここからさらにタイムを更新し、SGT EVORAの順位は10番手にまで後退。これを受け阪口選手も、Q1突破を目指すべくアタックを継続しました。しかしタイムそのものは1分48秒962に更新したものの、その順位は9番手に。わずか5/100秒という僅差で、SGT EVORAはQ1敗退となってしまいました。

これを受けて渡邊信太郎チーフエンジニアは「予選ではセクター4でのタイムが、午前中の走行に比べて0.2秒ほど遅くなっていました。路面温度もぎりぎりで想定内でしたし、これからその状況を精査します」とコメント。また走り終えた阪口選手は「原因は定かではないのですが、シフトアップポイントが、午前中よりも少し遅くなっていました」とアタック時の様子を伝えてくれました。

またQ2を担当する予定だった加藤選手は「公式練習走行の感触から行くと、まさか今回自分が走れなくなるとは思いませんでした。それでもこのもてぎは昨年追い上げができたコースなので、これから決勝での戦い方をチームで話し合って、あきらめずに戦います。これもレースです」と語ってくれました。そしてまさに決勝レースは、加藤選手の言葉通りの、ドラマティックな展開となったのでした。

 



 

■決勝レース

日曜日の決勝レースは普段よりもおよそ1時間早い13:10からスタートし、63周(GT500換算)の周回数で争われました。A-Bグループの合算からSGT EVORAのグリッドは17番手となり、そのスタートドライバーは加藤選手が務めました。そして加藤選手は、序盤から冴え渡る走りで、その順位を着実に上げて行きました。まさに目の前の敵を一台ずつ丁寧に仕留めるベテランらしい走りで、17周を終える頃にはその順位をポイント圏内一歩手前の、11番手まで一気に押し上げたのです。さらに18周目に入ると1分51秒704のベストラップを刻み、混戦のないクリーンな状況では51秒台を連発。「決して無理に抜くのではなく、相手のタイヤが厳しくなった状況を狙った」というクレバーな走りで、24周目には6番手まで順位を上げたのでした。とはいえ相手がトップ10を走るマシンともなると、そう簡単に抜けるものではありません。ここでSGT EVORAが確実に順位を上げて行くことができたのは、今回選んだタイヤが50℃を越える路面温度の中でも、ライバルたちに対してそのグリップを高い次元でキープし続けたからでしょう。そしてアドヴィックスと共に開発を進めているABSの制御がマシンの姿勢変化を助け、タイヤへの負担を減らしたからだといえるでしょう。

 



 

こうした状況のなか、今大会はすべての条件がSGT EVORAに味方しました。まず上位陣たちがルーティンピットを開始しはじめ、その順位は一気に3位までジャンプアップ。さらにはトップを走っていた♯52 日産GT-R GT3(J.P.デ・オリベイラ選手)が♯88 ランボルギーニ・ウラカンGT3(小暮卓史選手)のマシンに接触し、ランキングトップと予選6番手のマシンが戦線を離脱。これによって28周目にSGT EVORAは、トップに躍り出たのです。さらに素晴らしかったのは、この状態でSGT EVORAのタイムが一向に落ち込まないことでした。実に37周目に至るまで加藤選手は、51秒台をキープしたままトップを走り続けたのです。そしてここで、今回のレースを決定づける、重要な場面が訪れました。♯35 レクサス RC-F GT3がトラブルから出火し、マシンはコース脇に停止。これを見た加藤選手とチームは予定よりも一周早くマシンをピットに戻し、ドライバー交代を行ったのでした。この判断は見事に的中し、コースは今大会初のフルコースイエロー(FCY)に。コース上のマシンたちが時速80km/hで等間隔のまま走行したことで、チームはトップのまま阪口選手をコースへと戻すことができたのでした。

 



 

しかしこのままレースが終わるほど、現在のスーパーGTはイージーなレースではありませんでした。上位でチェッカーを受けるべくチームはタイヤを交換せずSGT EVORAをコースへと戻しており、なおかつ2番手を走る♯11 日産GT-R GT3(平中克幸選手)が猛烈な追い上げを見せていたのです。ここで12秒あったマージンは、一気に5秒まで縮めらました。さらにこのときSGT EVORAを駆る阪口選手はタイヤにタイヤかすが付く“ピックアップ”に悩まされており、そのラップタイムを53秒台まで落としていました。

 



 

加速力に勝るGT-Rを相手に、もはや万事休すか!? しかしここでも勝利の女神は、SGT EVORAを見放しませんでした。41周目にまず今回二度目となるFCYが導入され、そのわずかな間隔が保たれたままレースは小休止に。さらにこのインターバルを利用してピックアップを取り去った阪口選手は、再びラップタイムを51〜52秒台まで回復させたのです。そして「無理をして追い上げてきたのかGT-Rも、タイヤが厳しそうな印象を受けた」という阪口選手は、SGT EVORAのトラクションの良さを活かして走っている限り、そう簡単には抜かれないと判断。さらには3番手を走る♯52 TOYOTA GR SUPRA(吉田広樹選手)が11号車と2位争いを展開し、この攻防戦がSGT EVORAにとって、有利に働いたのでした。こうしてSGT EVORAは、トップに立ってから一度もその座を明け渡すことなくチェッカーを受けました。実に17番手から58周を走り抜き、今季初となる優勝を、ツインリンクもてぎで勝ち取ったのです。そしてこれは、阪口良平選手にとっても、スーパーGTでの嬉しい初優勝となりました。

 



 



 

 

■チーフエンジニア 渡邊信太郎

「今回は加藤選手のペースが素晴らしく、これを可能な限り伸ばす作戦を採りました。しかしレースペースが悪ければすぐに入れるプランも用意していたので、阪口選手は20周目あたりからずっとヘルメットをかぶって待っていたし、メカニックのみんなもずっとステイしていたんですよ。そしてロングスティントとなってからも、何か(コース上でトラブルが)あったらすぐに入れるようにしていたのですが、FCYがこれ以上ないタイミングで導入されたんです。タイヤ無交換は勝負所に用いる作戦ですから、今回は正直想定していませんでした。そういったシチュエーションになるとは考えられなかったからです。しかし加藤選手のペースも良く、これを決めました。またこのブレーキングが重要なコースで結果を出せたのは、アドヴィックスと開発しているシステムのおかげだと思います。すべての要素が、驚くほどうまくかみ合ったレースでした」

■ドライバー 加藤寛規

「チェッカーを受けた瞬間は嬉しさが込み上げました。今年のBoP(性能調整)にはかなり苦しめられていて、それにもチームは諦めずにずっとがんばっていましたから。タイヤ交換についても、今回はレースラップがよかったので、このまま行くべきだということを無線で告げました。勝てるかはどうかはわからないけれど、上位でゴールするにはそれしかないと思ったんです。レースはFCYが出たおかげで優勝しましたけれど、現実的にも6位ぐらいには入ってポイントを取りたかった。17位スタートということもあって、変な欲がなかったのもよかったです。今回は走っていてもずっとフィーリングがよかったので、『任せて!』という気持ちでレースができました」

■ドライバー 阪口良平

「11号車に追いつかれたときに、あっさり抜かれてしまうのかな…と一瞬思いましたが、そこで自分の底力を発揮できたのはよかったです。相手が速いところ、自分が速いところを分析するなかで、立ち上がりでGT-Rを離せたときに、はじめて『これは押さえることができる!』と思いました。残り7周くらいでやっとそう思えたくらいで、レース中は厳しい戦いでした。今回のレースは、前に出られたということが大きかったですよね。あれが後ろだったら、優勝はなかったと思います。次戦はさらにウェイトを積むことになりますが、エヴォーラは去年その状態でも素晴らしい走りをしていましたし、今回のようレースをしていれば、急にラップダウンしてくるマシンもあると思うので、最後まで諦めずに戦うつもりです!」

 

 



 

次戦の鈴鹿でも、応援宜しくお願い致します!